【2023年】小売業界に応募する時の面接で役に立つ基礎知識

小売業界に応募する人が面接を受けるにあたって、必ず知っておいたほうが良い基礎知識があります。
これらの知識を持っていないと、面接での受け答えに困ってしまうことがあります。
特に志望動機を答える面接では、これらの知識がないと入社への本気度が伝わりません。
ここでは、小売業界を取り巻く環境や仕事など、小売業界に応募する人が面接で役に立つ基礎知識を紹介します。
ぜひこの記事を読んで、あなたの就活や転職の面接に役立ててください。
小売業界とはどのような業界なのか
メーカーが製造した商品を仕入れて消費者に販売する業界を流通業界と呼びます。
流通業界はその中で、メーカーから商品を仕入れて、複数の小売店に販売する卸売業界と、卸売業などから仕入れて一般の消費者に直接販売する小売業界とに分かれます。
小売業界はさらに、「百貨店」「スーパーマーケット」「コンビニエンスストア」「専門店」という4つのビジネスモデルがあります。
- 百貨店
百貨店は、20世紀初頭に創業した三越百貨店が始まりです。
多岐にわたる商品を店頭に陳列して販売し、ほとんどが街なかの一等地に立地する都市型店舗で店も大型です。
近年は、化粧品などを大量に購入する訪日外国人向けの接客対応を強化していますが、コロナ禍などにより訪日外国人が減少し、売上げに大きく影響しています。
- スーパーマーケット
スーパーマーケットは、食料品を中心に日用雑貨類を販売するセルフサービス方式の小売業として、1960年代に誕生しました。
大量仕入れやセルフサービスによる人件費の節約による販売価格の低廉化を図ることで、小売業界のシェアを高めてきました。
その後は、店舗の大型化や取扱商品の増大などで百貨店を上回る規模となり、近年は、複合型ショッピングセンターの展開に積極的です。
- コンビニエンスストア
コンビニエンスストアは、英語の「convenience」(便利さ)」を由来とする小型のスーパーマーケットです。
日本では1970年代に登場し、急成長を遂げました。
住宅地や駅前、幹線道路沿いなどに立地し、年中無休、24時間営業など長時間営業を行っているのが特徴です。ただし、現在の人手不足の状況下、時短営業の動きもあります。
大手では公共料金の振込から宅配便の取扱い、ゲームソフト販売、ATM、季節商品の販売などサービスが強化されています。
コンビニエンスストアの経営形態には、直営チェーン店とフランチャイズ制によるものとがあります。
- 専門店
多岐にわたる商品を店頭に陳列して販売する百貨店やスーパーマーケット、コンビニエンスストアに対し、専門店は特定の領域のモノを扱っています。
例えば、衣料品を扱うアパレル店、医薬品や化粧品を中心にそろえるドラッグストア、電化製品などを取り扱う家電量販店などがあります。
専門店とは何か、業界を取り巻く環境についての基本は、ブログ記事「【2023年】専門店に応募する時の面接で役に立つ基礎知識」を参照ください。
面接で志望動機を語るさいに、小売業界とはどのような業界なのかを知っておくことは大切です。
小売業界を取り巻く環境と課題
小売業界を取り巻く環境と課題は、次の通りです。
- 百貨店
- 近年、富裕層やインバウンド需要に支えられてきた百貨店業界ですが、その恩恵は都市部や首都圏の店舗に限っています。
地方や郊外店は恒常的な赤字で閉店が相次いでおり、百貨店業界は全体として縮小傾向にあります。
- 新型コロナの影響による外出自粛や休業、時短営業に加え、インバウンド需要の消失で2020年の売上は前期より27%減、5期連続の減少となりました。
2021年は、前期比4.5%増となりましたが、コロナ禍前の2019年の80%程度にとどまっています。(経済産業省 商業動態統計)
特に売上の3割を占める衣料品の落ち込みが激しく、化粧品や宝飾品も大きく減少しています。
2022年は宝飾品等高額商材が好調であり、7月時点で売上高は前年同月比で5ヶ月連続プラスとなっています。(日本百貨店協会)
ですが、コロナ禍以前と比べれば依然マイナスの水準であり、インバウンド需要の低迷を踏まえれば、回復には長期を要する見通しです。
- そもそも百貨店は、それ以前に構造問題を抱えていました。
取引先アパレルとの間の「消化仕入れ」(委託販売の一種で、商品が売れたときに仕入れを計上する仕組み)というビジネスモデルは、バブル崩壊以降にモノが売れなくなり、通用しなくなりました。
しかも地方を中心に少子高齢化で消費不振に陥り、アマゾンなどネット通販も台頭してきました。
これまで百貨店は、このような環境変化や消費者行動変化に対応する必要に迫られながらも、革新的な手を打てずにいました。
バブル期に抱えた多くの従業員も重いコストとなっています。
- そのような状況下、百貨店各社がそろって注力しているのがデジタル事業です。近年、EC(ネット通販)の台頭で、消費者の購買行動が変化しています。
百貨店はこの変化に十分な対応ができず、ECで後れを取っていましたが、コロナ禍をきっかけにデジタル化を加速させています。
三越伊勢丹HDは利便性向上のため、三越と伊勢丹のECを統合しました。また、新たなショッピングの場として、スマートフォン向け仮想都市空間サービス「REV WORLDS」(仮想・伊勢丹 新宿店)を立ち上げました。
高島屋は、ネットビジネスを”第3のまち”と位置づけ、2023年には売上500億円を目指してEC事業を拡大します。
エイチ・ツー・オー・リテイリングは、DXによるマーケティング強化を図り、ECの拡大やZoomを使用したライブコマースデジタル事業を強化しています。
- 百貨店各社は、実店舗でも新たな売り場作りの形を模索しています。
大手百貨店では、EC発の新興ブランドを紹介するショールームを売場内に設置するなどの、新たな試みがみられます。
EC発の事業者にとっては、新規顧客の開拓、信頼性向上等のメリットがあります。一方、百貨店側も、若年層の集客に加えて、「場所の提供+α(データ販売など)」を提供するBtoB事業として新たな収益源となることが期待されていて、今後の動向が注目されます。
以上のように百貨店各社は、高品質な商品と品ぞろえの多さなど、百貨店の強みをいかして、ネットと実店舗の往来を促す「デジタルとリアルの融合」を掲げ、積極的なデジタル化を進めています。
- 近年、富裕層やインバウンド需要に支えられてきた百貨店業界ですが、その恩恵は都市部や首都圏の店舗に限っています。
- スーパーマーケット
- スーパーマーケットの販売額は2019年までは横ばいで推移していましたが、2020年は「巣ごもり消費」の恩恵をうまく享受して大幅増となりました。
2021年も前年からの「巣ごもり消費」の恩恵を受けて、堅調に推移しました。ですが、前年と比較して伸び率は明らかに鈍化しており、コロナ特需の一服感が見られます。
近年は、共働き世帯の増加や単身高齢世帯の増加に伴い、「お弁当・お総菜」のニーズが増えています。また、テレワーク普及等の新しいライフスタイルの定着もあり、このようなニーズを背景に、各スーパーともに惣菜・弁当部門を強化しています。
- スーパーマーケットは、新規出店を背景に業績を伸ばしてきましたが、近年は伸び悩んでいます。
特に専門店やインターネット販売の影響を受け、衣料品の売上げが減少となったことが売上高に影響を及ぼしています。
スーパーマーケット各社は生き残りを懸けて、グループ会社内での経営統合や、エリア別の事業会社への再編、業界内の他社買収(M&A)や、ライバル企業間での提携など、大胆な対策を打つようになっています。
- 近年スーパーマーケット各社が力を入れているのは、PB(プライベートブランド)の充実です。
PBは卸売業者を通さず販売できるため、通常の商品に比べ5~10%ほど高い粗利益率を確保できるメリットがあります。
また、原材料や製造方法、デザインなど、オリジナリティを持たせることができるために、企業ブランドの向上にもつながります。
一方、コロナ禍の生産・物流の停滞や、ロシアのウクライナ侵攻による穀物価格の上昇等を背景として、食品メーカーの値上げが相次いでいます。
こうした状況にあっても、一部の大手小売事業者では、PBの価格を据え置くなどして、低価格戦略を打ち出す先も出ています。今後、価格競争が激化することで、バイイングパワー強化を狙った再編の加速に繋がる可能性もあります。
PBはスーパー側のメリットだけでなく、安くて良いものを求める消費者のニーズにも合致しているため、今後もさらなる普及が予想されます。
- スーパーマーケットの販売額は2019年までは横ばいで推移していましたが、2020年は「巣ごもり消費」の恩恵をうまく享受して大幅増となりました。
- コンビニエンスストア
- コンビニエンスストアの販売額は、2011年から2019年にかけて増加傾向にありましたが、2020年は減少し、2021年も前年比1.0%増と横ばいでした。
コロナ禍の影響では、外出自粛の影響は相対的に小さく、有事に強いとみられていたコンビニは意外と苦戦しています。
ビジネスパーソンのテレワークの影響もあり、オフィス街でのランチの減少などが大きく影響しています。
- コンビニエンスストア各社は、店舗数を増やす中で、少子高齢化や女性の社会進出、ライフスタイルの変化に対応した調理品などの商品開発に注力してきました。
おにぎりや弁当、スイーツなどに力を入れ、顧客を飽きさせない工夫をしてきました。
このように新規出店の「量」と商品開発による「質」を追求し、これまで業績を拡大してきましたが、成長は横ばいになりつつあります。
- コンビニエンスストア各社は、現在の人手不足の状況下、働き方改革の動きもありビジネスモデルの根幹であった24時間営業の見直しを進めていました。
加えてコロナ禍による夜間の外出減で深夜営業が厳しくなり、今後もこうした問題は続くとみられることから「脱24時間」はさらに加速しそうです。
セブンイレブンやローソンは無人化ではなくAIなどを活用した省人化した店舗戦略も描いています。
- 国内のコンビニ数は飽和状態にあるなかで、各社は経済成長が期待される東南アジアを中心に海外展開を加速しています。
- コンビニエンスストアの販売額は、2011年から2019年にかけて増加傾向にありましたが、2020年は減少し、2021年も前年比1.0%増と横ばいでした。
- 専門店
- 家電量販店の2021年の売上は、対前年比2.4%減でした。
テレワークの浸透もあり通信家電、その他(住宅設備家電など)が売上増となりましたが、AV家電、情報家電、生活家電が前年増加した反動もありマイナスに転じました。(経済産業省「商業動態統計」)
ECサイトの強化を中心に、家具やアウトドア用品、雑貨、酒類、食品など、各社は非家電事業での収益確保を図っていますが、アフターコロナの生き残りをかけて、ビジネスモデルの転換が進みそうです。
- ドラッグストアの2021年の売上は、対前年比0.4%増となりました。
ヘルスケア用品(衛生用品)・介護・ベビー用品、家庭用品・日用消耗品・ペット用品が前年に大きく増加になった反動でマイナス、トイレタリーが横ばいとなりました。調剤医薬品や健康食品、食品、その他は、引き続き好調です。
マツモトキヨシホールディングスとココカラファインは2021年10月、経営統合しました。2021年度の決算で、業界2位となりました。この経営統合をきっかけにさらに競争が激化しそうです。
一方、コロナ禍に加え、毎年の薬価改定で厳しさを増す調剤薬局に関しても、ドラッグストアを含めた再編が注目されます。
- ホームセンターの2021年の売上は、需要一巡による反動の影響か前年比2.9%減となりました。
園芸・エクステリアとペット・ペット用品が増加となった他は、インテリア、家庭用品・日用品、電気、DIY用具・素材がそれぞれ減少といった具合でした。
巣篭り需要は一巡した感があり、引き続きプライベートブランド商品の強化や、従来とは異なる高級感を打ち出した店舗の展開、海外市場の開拓などが進むものと思われます。
- 家具・インテリアの2021年の売上は、新設住宅着工戸数の増加が追い風となりました。
一方で、巣ごもり消費やテレワーク需要の一服感も見られ、原材料価格の高騰などインフレ懸念も出てきました。
大型家具需要が頭打ちの状態です。また、ここ数年、消費者のライフスタイルが大きく変化していることに加えて、インターネット通販やフリマアプリの台頭などにより、リアル店舗以外での消費活動が活発化しています。
このような動向により、近年、生活雑貨を充実させて来店を促すビジネスモデルの展開が増えています。
- アパレルの2021年度業績は、ネット通販の販促強化によるEC化率の上昇に加え、不採算店舗の閉鎖といった構造改革や値引き販売の抑制など、採算重視の戦略を行ってきたことから、黒字転換が多く見られます。
ですが、新型コロナ禍の中、外出自粛の継続や消費意欲の減退から来店客数の低迷が続いており、依然としてコロナ禍前水準を大きく下回っています。
2022年度は、円安進行や原材料価格上昇、物流費高騰に伴うコスト上昇圧力が強まる中、需要低迷が続く局面での販売価格への転嫁は容易ではなく、採算悪化が懸念されます。
こうした環境下、アパレル企業は、EC販売の更なる強化や生活雑貨の取扱い拡充、リユース・リサイクルなど2次流通を活用した販売チャネルの開拓等、新たな取組みを進めています。
- 家電量販店の2021年の売上は、対前年比2.4%減でした。
面接では、「小売業界の課題は何だと思いますか」と質問されるかも知れません。また小売業界でも業態は様々であり、面接ではその業態に特有の質問があります。
コロナを契機にした小売業界のビジネスモデルの転換
小売業界はビジネスモデルの見直しなどを進めてきましたが、新型コロナウイルスの感染拡大により、ビジネスモデルの転換の加速を迫られています。
3密回避は競争環境をがらりと変え、小売業界はより多くの顧客を店舗に呼び込むことで利益を上げる仕組みが通用しなくなっています。
このため小売業界の各社が取り組んでいる電子商取引(EC)の活用など、ビジネスモデルの転換が加速することが予想されています。
コロナ禍を契機に加速し始めたビジネスモデルの転換は多くの企業で進む方向にあり、これをいかに上手に乗り切るかが今後の企業の成長を大きく左右するとみられます。
面接では、「今後も成長を維持するためにはどうしたら良いと思いますか」といったような質問がされるかも知れません。
小売業界の仕事
百貨店やスーパーマーケット、コンビニエンスストア、量販店など小売業は、顧客のライフスタイルに合わせた価値ある商品・サービスを常に提供し続けることが仕事です。
小売業界に特徴的な職種として、販売職をはじめ、店長やバイヤー、商品開発、販売支援、物流管理などがあります。
販売職は、来店客のニーズを知り、顧客にあう商品を提案したり売ったりする仕事です。
店長は、店舗のリーダーとして、店舗運営や社員の管理・育成などを担当し、受発注管理などを行います。
バイヤーは担当する商品の選定や仕入、買付け、新規ルートの開拓などを行う仕事です。
商品開発は、百貨店やスーパーが、PB商品などを企画する仕事です。
販売支援は、マーケティング戦略の立案、店舗レイアウトの変更、新規出店計画、イベント・キャンペーンの企画・運営、広告やチラシの企画・作成などを行います。
物流管理は、商品の物流や在庫を管理します。これから店舗とインターネットの両方で販売する企業が増えることが想定され、在庫管理は複雑になります。
また、通販の場合は商品の届く速さと正確さも重要になり、物流管理は、今後ますます重要になります。
これら以外にも、事務職種として総務、人事、経理、経営企画などがあります。
小売業界ではどのような仕事があるのか、仕事内容をしっかり理解していることが、面接で志望動機を答えるときに重要です。
また、事前に十分把握していると、面接で希望する仕事を訊かれたときに役に立ちます。
まとめ
小売業界の各社に応募する人は、小売業界の基礎知識を身につけて、面接での志望動機を語る際などに役立ててください。
また、面接における質問に答えるときにも、本記事で紹介したような知識が大切になります。
この他にも業界の知識を積極的に吸収することが、面接の対策として必要です。
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小売業界各社の具体的な面接対策については以下の記事を参考にしてください。